顧客のIDおよびアクセス管理(CIAM)とは、IDおよびアクセス管理(IAM)の一種で、認証と承認を顧客向けのアプリケーションに統合したものです。CIAMには主に次の3つの機能があります。
顧客のID管理は、形態や規模を問わずあらゆる企業にとって重要となるセキュリティ対策です。セキュリティ侵害が発生すればコストの増加に直結し、多くの場合、収益に大きな影響を与えることにもなります。IBM Securityによると、セキュリティ侵害の被害に遭った企業の80 %が、攻撃によって顧客のPIIが漏洩したと述べており、漏洩による顧客1人当たりのコストは平均で150ドルに上ります。CIAMソリューションは、アカウントの自己管理、請求書の支払、注文の追跡や返品など、顧客の一般的なタスクを管理するシステムと簡単に統合することができ、パスワードの危殆化リスクを軽減します。
CIAMの主なメリットは以下の通りです。
CIAMとIAMの要件は、拡張性、セキュリティ、アクセシビリティに関してはほぼ同じです。対象が社内の従業員であっても、外部の顧客であっても、優れたユーザエクスペリエンスを保証するには、CIAMもIAMもこの3つの要件を満たす必要があります。ただし、CIAMは次の点で従来のIAMアプローチを上回っています。
IAM
CIAM
ユーザ数が限られており(10~100,000人)、トラフィックが急増した際の対応能力が低い
CIAMポータルは、100万単位のユーザをサポートできるほか、トラフィックの(量と頻度の)急増にも対応できる。ポータルの利用は予測不可能だが、ブラックフライデーなど多くの人がシステムに一斉にアクセスするピーク時に対応できる必要がある。
ユーザごとに1つのID
消費者は複数のIDを所有可能
企業が登録
自分で登録
クローズドシステム
エンドユーザのいる場所や使用しているデバイスの種類を問わず、一貫したログインエクスペリエンスを提供し、あらゆるデバイスで利用できる、アクセス性に優れたシステム
厳格なセキュリティポリシーによる内部認証
CIAMは、参入障壁を低く抑える形で導入する必要がある。ソーシャルプロ��イダ(Google、LinkedInなど)のような外部ソースを用いた認証によって、セキュリティを損なうことなくスムーズなパスワードレス認証が可能になる。
従業員によるアクセス、および社内使用を目的としたプロファイルデータ
マーケティング、ビジネス上の意思決定、セキュリティ、およびコンプライアンスに関する、重要な分析に使用される顧客データ
消費者が覚えておかなければならないパスワードは数多くあるため、優れたCIAMベンダーは、個人や企業のセキュリティ対策において顧客のID管理が重要になると理解しています。ソーシャルメディア、オンラインバンキング、オンラインストリーミングのアカウントなど、顧客のIDの数は急増しており、世界中で消費者向けのサービスがセキュリティ侵害を受ける中、ハッカーの下にはユーザの資格情報が着々と蓄積されています。集められた資格情報はオンラインで売買され、広範なボットネットワークを使用した大規模なパスワードスタッフィング攻撃が行われます。
これによって特にリスクにさらされるのが、パスワードを使い回している消費者です。CIAMを使用すれば、消費者は2つ目の認証要素を追加するか、自身のソーシャルIDでサインインするかを選べるようになるため、アカウントの乗っ取り防止を強化することができます。
顧客には、認証要件を備えた、カスタマイズされたセキュアなログインポータルへのアクセス権が付与されます。このポータルはIT部門が管理しており、裏側であらゆるセキュリティソフトウェアやチェック機能、プロトコルを最新の状態に保ち、増え続けるウイルスやハッカーから守っています。
これまで企業は、顧客がサインインする際の方法として、ユーザ名とパスワードという選択肢しか与えていませんでした。MFAが普及した現在は、アプリケーションがユーザにアクセス権を付与する前に、認証要素を2つ以上要求するようになってきています。MFAを追加したことで、ユーザがアカウントの作成をあきらめたり、利便性が低下したりしないようにするためには、参入障壁を低く抑えるような形でCIAMを導入する必要があります。
適応型認証では、リスクスコアを用いて、ログイン時にMFAが必要か否かを判断します。リスクスコアとは、ログイン時のリスクレベルを計算したもので、これを基に、エンドユーザにアクセス権を付与するか、2段階目の認証を求めるかを判断します。リスクスコアの決定には、場所や時間、頻度などの基準が用いられます。
Gartnerによると、CIAMは顧客との強固な信頼関係を築くために欠かせない要素となっています。実際、デジタル面で信頼できる顧客ソリューションを導入している企業は、導入していない企業に比べてオンラインでの販売利益が2020年までに20 %増加するとされています。Trusted Customer Experiences™ソリューションを導入すれば、顧客のID、信頼、ロイヤルティに関する強固な基盤を構築すると共に、運営コストを最小限に抑え、収益と顧客維持率を最大化し、カスタマーエクスペリエンスを最適化することができます。
SmartFactor Authentication™は、必要に応じてセキュリティを強化することで、認証プロセスにおける手間を最小限に抑えます。CIAMを導入すれば、獲得できる顧客が増え、顧客とのやり取りも多くなり、クロスセルに影響を与えやすくなるため、信頼とロイヤルティを築き、収益と顧客維持率を向上させることができます。
CIAMソリューションの目的は、堅牢なセキュリティを維持しながらエンド・ユーザ・エクスペリエンスも快適にすることです。多彩なユースケースはいずれもその目的に合致しています。CIAMの最も一般的なユースケースには次のようなものがあります。