ハイブリッドクラウドにより、オンサイトのサーバからプライベートクラウドおよびパブリッククラウドまで、複数の環境にわたるインフラストラクチャを構築できます。この柔軟性と相互運用性が、ビジネスでハイブリッド・クラウド・ソリューションがよく選ばれる理由です。
クラウドは、ほとんどのデジタル変革構想の中核となっています。しかしながら、企業が自社のインフラストラクチャを、単一のクラウドプラットフォームにすべて移行することは決して容易ではありません。レガシーアプリケーションがクラウドでは上手く動作しない、複数のクライアントが異なるプラットフォーム用に設定されている、コンプライアンスや互換性に関わる課題があるといった問題に直面する可能性があります。この理由により、企業の大部分(82 %)が、ハイブリッド・クラウド・インフラストラクチャの構築を選択しているのです。
ハイブリッドクラウドにより、2つまたはそれ以上の領域を最大限に活用することができます。顧客の機密情報はローカルのサーバ内に保存したまま、顧客向けのアプリケーションをパブリック・クラウド・プラットフォーム上で実行することができます。クラウドアプリケーションがお客様のデータにアクセスする必要がある場合、安全なAPIを使用して実行します。また、プライベート・クラウド・プラットフォームにより、オンサイトのハードウェアやパブリッククラウドに接続することもできます。入念に構成されたハイブリッドクラウドでは、プラットフォーム間の統合や通信が問題になることはありません。
一般的に「クラウド」とは、単一のプラットフォームで、すべてのインフラストラクチャとサービスがホストされるものを意味します。例えば、Lambda、S3バケット、APIゲートウェイなどのさまざまなAmazon Web Services(AWS)製品を使用して、インフラストラクチャ全体を構築する場合です。
一方、ハイブリッドクラウドでは、単一のプラットフォームのみに依存することはしません(できません)。例えば、アプリケーションやサーバの一部をAWSで、それ以外をGoogle Cloud Platform(GCP)やプライベートクラウドで実行します。専用ソフトウェアにより、さまざまな環境をシームレスにオーケストレーションし、統合することができます。
パブリッククラウドでは、AWSやGCPなど、サードパーティのプロバイダが管理するインフラストラクチャをプロビジョニングできます。一般的に、パブリッククラウドはマルチテナントプラットフォームで、巨大なリソースプールを複数の顧客が共有しています。
一方、プライベートクラウドは通常、シングルテナントプラットフォームです。プライベートクラウドの構築と管理は、企業が自社で行うことも、サードパーティにアウトソーシングすることもできます。いずれの場合でも、プライベートクラウドは企業の専用リソースを提供するもので、組織のファイアウォール内に存在します。プライベートクラウドを構築するための有用で高機能なプラットフォームにOpenstackがあります。
ハイブリッド・クラウド・ソリューションにより、異なるパブリッククラウドとプライベートクラウドを同時に使用した作業が可能です。それだけではなく、ハイブリッド・クラウド・ソリューションでは、スタンドアロンのオンサイトサーバもオーケストレーションができます。
ハイブリッドクラウドは、設計と統合を適切に行うことで、社内データセンターと同等のセキュリティを実現できます。ハイブリッドクラウドは、一般的に攻撃対象となる部分が多くなり、本質的により複雑であると考えることもできますが、適切なセキュリティおよび管理ポリシーを実装することで、悪意ある犯罪者を食い止めることができます。
ハイブリッドクラウドのセキュリティに関する大きなメリットは、単一障害点がないことです。パブリック・クラウド・プラットフォームが侵害されても、ローカルのデータセンターまで影響が広がることはまずありません。また、ハイブリッドクラウドを使用すると、セキュリティ上重要なデータはローカルの内部サーバに保存されるため、パブリッククラウドに露出する可能性はさらに低下します。
ハイブリッドクラウド市場は活況を見せています。主な理由は、デジタル変革を取り入れる企業が増加していることです。オンサイトのハードウェアで実行するレガシーソフトウェアを統合できる、クラウドネイティブのアプリケーションを構築したい場合、ハイブリッド・クラウド・ソリューションに投資することは賢明な選択と言えます。今後数年、ハイブリッドクラウドの採用はさらに増加するものと予想されます。
また、将来的には、ハイブリッドクラウドの管理はずっと簡単になるでしょう。今後はさらに洗練されたオーケストレーションおよび統合プラットフォームが続々と登場し、企業は安心してハイブリッドクラウドを利用できるようになるでしょう。