VPNは仮想プライベートネットワーク(Virtual Private Network)の略です。その名前が示すとおり、パブリックインターネット上に仮想的なプライベートネットワークを作ります。実際のIPアドレスを隠し、外部とのすべての接続を暗号化し、匿名性を与えます。
インターネットを、世界中のすべてのコンピュータが情報を送受信するために使用する公共の高速道路として考えてみましょう。情報は暗号化できるため、受信者以外に解読できる者はいませんが、それでも傍受されることがあります。
ここで、VPNを、高速道路の下を走る安全な私設のトンネルだと考えてみます。公共の高速道路で情報を送信する代わりに、あなたと目的の受信者だけが知っているこの私設のトンネルを使用します。
プライバシーとセキュリティをさらに高めるために、VPNは実際の送信者のIDを隠します。VPNを使用して送信したすべての内容は、最初にVPNクライアントにより受信されます。これをトンネルにある郵便局と考えてください。この郵便局があなたの手紙を受け取り、郵便局の住所を書き入れ、あなたの希望する相手に発送します。受信者が知っている限り、その手紙はあなたからではなく、郵便局から届いたものです。
もちろん、その手紙は受信者だけが理解できる言語に翻訳されます。受信者がその手紙に返信すると、郵便局がその手紙を受け取り、理解できる言語に翻訳し直して、あなたに送ります。
VPNを使用せずにインターネット上のWebサイトにアクセスすると、要求がインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)に送信され、要求したWebサイトに接続します。個人情報(IPアドレス、位置情報など)は一切暗号化されず、ISPや他の仲介者からアクセスすることができます。
VPNを使用すると、VPNクライアントは、デバイスからVPNサーバまでのセキュアで暗号化されたトンネルを確立します。VPNクライアントは、ユーザのIPアドレス、位置情報、その他の情報をISPや他の仲介者から隠します。
情報がVPNサーバに届くと、復号化され、目的の受信者に渡されます。このようにして、完全な匿名性とセキュリティを確保しながらお気に入りのWebサイトにアクセスすることができます。
VPNは、組織のプライベートネットワークに対するセキュアなリモート接続を形成するために広く使用されています。リモートワーク中の従業員はログインしてVPNトンネルを確立し、社内のリソースにアクセスすることができます。
VPNログインは企業のプライベートインフラストラクチャへのリモートアクセスが許可されるため、ユーザ名とパスワードの組み合わせだけでは不十分です。多要素認証(MFA)を有効にし、ワンタイムパスコード(OTP)などの認証要素を1つ以上追加して設定することがお勧めです。
VPNクライアントは真のIPアドレスを隠し、デバイスに新しいIPアドレスを与えます。このIPアドレスと対応する位置情報は、インターネットにアクセスするときに使用されます。しかし、VPNサーバとの接続が突然切れた場合はどのようになるのでしょうか。
このような状況は、何らかの理由でVPNサービスが停止したり、誤動作が発生したりしたときに発生する可能性があります。通常、コンピュータは元のIPアドレスにフォールバックします。その結果、ユーザの位置情報、オンラインアクティビティ、その他の情報が他人に突然見えるようになる可能性があります。
これを防ぐために、一部のVPN製品はVPNキルスイッチと呼ばれる機能を備えています。キルスイッチは、VPN接続がドロップした場合にユーザをインターネットから切断します。キルスイッチには、アプリケーションレベルとシステムレベルの2種類があります。
アプリケーションレベルのキルスイッチでは、インターネットから切断したいアプリケーションを選択することができます。これとは逆に、システムレベルのキルスイッチでは、強制的にすべてのオンラインアクティビティを完全にシャットダウンします。
携帯電話でもVPNを設定することができます。多くの無料およびプレミアムVPNプロバイダはスマートフォン向けソリューションも提供しています。ただし、携帯電話向けのVPNアプリケーションを選択する場合には特に注意が必要です。
これは、インターネットにおけるユーザの多くの時間がスマートフォンで費やされているからです。間違ったVPNプロバイダを選択すると、個人データの多くが悪意ある者の手に渡ってしまう可能性があります。さらに、閲覧速度が大幅に低下し、迷惑な広告によって使用感が完全に損なわれることがあります。
VPNレスアクセスとは、リモートの特権システムにVPNを使用しないでセキュアにアクセスする新しい方法です。通常、このようなソリューションでは、内部リソースへのアクセスを許可する前にユーザが提供しなければならない認証要素の数を決定するために適応型認証を使用します。この結果、組織は真のZero Trustアーキテクチャを構築できます。
VPNレスソリューションは、より使いやすく、ログインしたユーザは使用に必要なリソースへのアクセスのみが許可されるなどの最小特権の原則を管理者が適用できるため、支持を集めています。
これは、一度VPNネットワークにログインすると本質的に信頼されて、すべてのリソースにアクセスできるようになるVPNベースのアクセスとはまったく異なるものです。
VPNは、個人レベルでも組織レベルでもユーザの匿名性とプライバシーを確保するために非常に役立ちます。マイナス面もいくつかありますが、サイバー攻撃がこれまでになく増えている現状では、利点が欠点を大きく上回ります。